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キャプテン・ビーフハートの思い出



Captain Beefheart And His Magic Band "Trout Mask Replica" US STRAIGHT STS 1053



2010年12月17日"牛心隊長"キャプテン・ビーフハートことドン・ヴァン・ヴリート氏が亡くなった。69歳。

またひとり、20世紀を代表する伝説がこの世を去った。



私がビーフハートをリアルタイムで知ったのは「Doc at the Radar Station」(邦題:美は乱調にあり)発表時で、すでに40歳をまわっていたと思う。初めて知ったときにすでに年をとっていたし、当時からセットで語られていたフランク・ザッパも40をまわっていたので、年齢云々など考えたこともなかったのだが、こうして享年が発表されるとまだまだ死ぬ年じゃないのにと思い、残念な思いがつのる。



隊長の死と今年2月3日の朝日新聞夕刊に掲載された町田康氏のキャプテン・ビーフハートに対する追悼文がキッカケでこの歴史的名盤のオリジナル盤を買うことを決心した。



オリジナルは米国STRAIGHTレーベルでカタログNo.STS1053の二枚組。



本作を知って最初に買ったのはReprise茶色レーベル、続いてSTRAIGHT盤を買ったのだが、これがジャケットはSTS1053クレジットなのだが、レーベル面に2MS 2027とあるセカンドプレス。これでもReprise盤に比べれえばかなり音が良い。



そして今回購入したファーストプレスにはSTRAIGHTのカンパニーインナースリーブの他に歌詞、イラスト、そして隊長の少年時代の写真が入ったインサートが付属している。

マトリクスはすべて手書きの2-STS-1053-1で「P」となっている。他のロットに「RE」とあるものもあるが、これはリイシューではなく工場の違いではないかと思う。



音の方はセカンドプレスにくらべても更に鮮明で非常に「見晴らしのよい音」だ。このアルバムはなんだかスタジオ一発録りのような録音なので、この「見晴らしの良さ」は貴重だ。

初めてこのアルバムに接して以来実に30年ぶりにオリジナル盤を聴いてこのアルバムのスゴさを再認識した。



とにかく初めて聴いたのが10代の終わりで、とにかく最後まで聴き通せず当時持っていたカセットテープに録音し、ウォークマンで毎日携帯し移動中などわずかな時間を見つけてこのアルバムを聴き続けた。

その結果、当時台頭していたポストパンク&オルタナティブやニューウェイヴ、プログレやハードロックが全くもって単調にしか聞こえなくなり、しばらくこのアルバムしか受け付けない体になってしまった。

恐ろしい。本当に恐ろしい音楽だ。



マジックバンドのメンバーが隊長の指示通りに中学生ばりのヨタヨタの変拍子ブルースを演奏、その上を無法極まりないハーモニカやサックス、バスクラリネットのソロが飛び交い、極めつきは往年のウルフマンジャックを連想させる隊長のハズキーヴォイスがかぶさってくる。歌と言うよりはひたすら「がなってる」といった方がいいだろう。しかもハンディタイプのテープレコーダーに録音されたとおぼしき隊長がひとり唸っているトラックもかなりの入っていて、これがまたキビしい。

まさしく、聴くだけで「荒行」だ。



しかしながら一通り聴き慣れてくると、この超特異音楽は多くの人の指摘する通り、紛れもなく西洋音楽史上最も重要なものであることがわかってくる。



町田康氏はビーフハートの音楽を「世界遺産級」と評しているが、確かにそうだ。

やってる音楽が超特殊なのに加え、音楽に負けないくらいエピソードの多い人で、「伝説」と呼ぶにふさわしい存在だ。真偽のほども怪しいが、昔聞いたエピソードは、「実は難聴だ」「楽譜が書けないからテープレコーダに歌を録音し、それをメンバーが楽譜に書き直している」「自分の声を聴かせると植物が枯れてしまうので、ライブ会場にあ置いてあった観葉植物を撤去させた」。まったく最高だ。



晩年は画家としての活動に専念し、音楽家としてのキャリアは1982年の「Ice Cream for Crow」(邦題:烏と案山子とアイスクリーム)が最後だったわけだが、当時がMTV全盛で、なんとなくテレビでピーター・バラカンのVJをしている音楽番組を見ていたらピーター氏が「誰もリクエストしないので私がリクエスト」と称して「Ice Cream for Crow」のプロモーションビデオを流したことがあって、それはもうとんでもなく驚いた記憶がある。

「Trout Mask Replica」ほどのインパクトはないが、これはこれで素晴らしい。





町田康氏のビーフハート追悼文も拝読した。



曰く言い難いビーフハートの音楽を「ナスカの地上絵、とか、イースター島のモアイ像とか、飛鳥の酒船石」とオーパーツを並べて表現している。「飛鳥の酒船石」と挙げるところがいかにも関西出身の町田氏らしいところだが、いろいろうまい言葉を見つけようとしても、やはりうまい表現が見つからなかったのではないか。

そもそも空間軸に加え時間軸を持った音楽という表現形態を言葉で表現するのは難しいのだが、類似する音楽の見当たらないビーフハートの音楽に至っては「ほぼ不可能」という結論なのかもしれない。



それにつけて思い出すのは昔、町田康氏(当時の名は町田町蔵)にインタビューしたこと。

「町田町蔵と人民オリンピックショー」の名で活動していた時期、彼のバンドの音はビーフハートの音に非常に接近していて、当時のインディーズシーンで唯一無二の輝きを放っていた。

私はその時完全に彼の音楽にノックアウトされ、町田氏のバンドのライブには皆勤賞状態で通っていた。

幸運にもF誌でインタビューの機会があったとき、ビーフハートの話をすることができた。その時は町田氏は次作「Lick My Decals Off, Baby」の方に強く影響されていたように見えた。

当時私が所持していた「The Life and Times of Captain Beefheart」という洋書を貸したところ、喜んでコピーをとられていた。

インタビュー後しばらくして、私が渋谷ラ・ママで須山公美子、モーガン・フィッシャー、ルナパーク・アンサンブルらのライブを企画したとき、町田町蔵と人民オリンピックショーが突然飛び入り参加をしてきたことがある。その時は非常に苦労したが、今となっては忘れられないいい思い出だ。



いまでもその風景はまぶたに焼き付いている。


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geppamen

Author:geppamen
2005年4月にYahoo!ブログで「第2思春期レコ買い日記・旧館」、2010年4月にはヤプログ!で「第2思春期レコ買い日記・新館」と、細く長く続けて参りました拙ブログですが、ヤプログ!の終了を機に、こちらに引っ越して参りました。
非常に残念なことに、せっかくこれまでいただいたコメントを持ち越すことができず、クリアされてしまいました。この場を借りてコメントいただきました皆様にお詫び申し上げます。

FC2ブログでは名前を「第2思春期レコ買い備忘録」と微妙に変更して続けていきたいと思います。

思春期に惹かれたものをもう一度ひっぱりだしてきて後生大事に整理を始める今日この頃。プログレを中心としたアナログレコード集めに人生の貴重な時間を費やすささやかな記録です。

今後ともよろしくお願いします。